私の名はジェイコブ一郎。
“コブ星”に住んでいる。
▲コブ星人“ジェイコブ一郎”
「頭」の毛が薄くて当たり前のコブ星に住む私にとって、人間の頭髪の量が私たちより多いことや、彼らが毛の量を気にすることが不思議でならない。
私はこの疑問に立ち向かうべく人間の「毛」について調べている。
今までのリサーチで、人間の髪に対する特別な感情や文化、ユニークな人毛活用法などを紹介してきた。
今回は、私が気になった「犬や猫はたくさんの抜け毛をしても、なぜ禿げないのか?人間の毛とどう仕組みが違うのか?」という疑問を解決してみた。
<今回分かったこと>
・多くの動物にとって、毛は「体温調整」する重要な存在
・犬が毛を増減できる仕組み
・ハゲタカの頭に毛がない理由
・毛の有無が、命に関わる動物たち
・「毛なしでも元気」は人間の特権?
多くの動物にとって、毛は「体温調整」する重要な存在
ペットを飼っている人間の多くが悩まされる動物の「抜け毛」。
生え変わりの季節には、洋服にたくさんの毛がくっついたまま、なんて光景もしばしば見る。
ただ、なぜ多くの動物はこんなに毛が抜けているのに禿げないのだろうか?
その理由のひとつは、「毛」の役割の違いにある。
もともと動物は「毛」の量によって体温調整をしている。
夏は暑いので少なく、冬は寒いので多く。
このサイクルを回すために毛が抜けたり、生えたりする。
しかし、人間は進化の段階で毛を薄くした。その代わりに、汗腺を発達させて「汗」で体温調整をするようになった。
多くの動物にとって、「毛」は体温調整という重要な役割があるが、人間の「毛」にはもうその役割はない。
季節や気候に合わせて「毛」を増減するようなことはないのだ。
犬が毛を増減できる仕組み
動物の「毛」による体温調整は巧妙なものだ。
他の回でも、人間の毛の数は一人あたり約500万本が生まれた時から生えそろっていて、「毛球」から作られていることをお伝えした。
人間の場合この「毛球」1つから生まれる毛は1本が基本。多くても3本と言われている。
一方で、毛の量をかなり調整しなくてはいけない動物は、ひとつの「毛球」からたくさんの「毛」が生える。
犬の場合は、太い毛2~5本、細い毛5~10本ぐらいのことが多い。
動物は「毛球」をこのような構造にすることで、必要な分だけ毛を増やしたり減らしたりしやすくしているのだ。
ハゲタカの頭に毛がない理由
でも、毛がない、もしくは一部ない動物もいる。
その一つがハゲタカ(正式にはハゲワシと言う)だ。
彼らは呼び名の通り頭がハゲている。
彼らの頭に毛がない理由には諸説ある。
【ハゲタカの頭に毛がない諸説】
・彼らは動物の死骸をえさとしているため、頭部に毛があると血が付着して羽も汚してしまうためだという説
・食事の際に付着した血液を、より早く乾燥させて紫外線で殺菌しているという説
・頭部には血管が多く、冷ましたいことはあっても温めたいことはないので毛は不要という説
どれが本当か分からないが、いずれも「毛が不要 or 邪魔」だと言うことだ。
毛の有無が、命に関わる動物たち
他の動物でも「毛が不要 or 邪魔」な場合は、ハゲタカ同様に毛が薄くなる。
例えば、クジラやイルカは動物だが毛がない。
理由は、泳ぐ際に水の抵抗が邪魔になるためだ。
彼らは早く泳げないと天敵に食べられてしまうので、毛が命取りになる可能性がある。
ゾウ、サイなど暑い地域の大型動物は、毛が薄い。
理由は、彼らは「暑い」ことが前提のため毛を増やす必要がないためだ。
ちなみに、毛が薄いネコとして有名な「スフィンクス」という品種は、カナダのネコの突然変異が起源だ。
「毛なしでも元気」は人間の特権?
人間の体毛が全体的に薄かったり、生まれたときにあった毛が薄くなったとしても、生命に大きな影響はない。
男性ホルモン、遺伝、生活習慣の影響で若ハゲができても、ほとんどの人が元気に生活ができるのがその証拠だ。
人間は進化の過程で毛が不要となったのだ。
若ハゲでも生きていられるのは人間が進化した証拠だとも言い換えられる。
だからこそ、人間にとって「毛」が必要不可欠なものの意味合いではなく、文化的・宗教的での意味合いが強いのかもしれない。
【ジェイコブの気づきと疑問】
■体温調整の巧妙な仕組みに感心
人間がペットとして飼っている犬や猫の毛が抜けたり生えたりしているのは、何となく知っていた。しかし、人間では通常1毛球あたり1本の毛を、10本以上生やすことで体温調整しているとは巧妙だ。
もちろん毛を薄くして汗腺を発達させた人間の身体の仕組みも素晴らしい。
■毛のあるなしは進化の過程による
犬、猫、人間の毛の目的の違いが分かっただけでなく、ハゲタカの頭部に毛がない理由、クジラやイルカの毛がない理由、ゾウやサイの毛が薄い理由も分かった。
いずれにしても、進化の過程で邪魔なものをなくす、必要なものを保つようになっているのだ。
■人間は薄毛でも元気な生き物
汗腺を発達させて、体温調整という重要な役割から毛を開放した人間。こういう動物は稀だ。
つまり、薄毛でも元気でいられることは人間の特権なのかもしれない。
今回は、人間と他の動物の毛の仕組みの違いが分かってスッキリした。毛の存在意義が違うのだ!
次はどんな毛の事実に出会えるのか。まだまだ旅は続く。
<今回の学習元>
HAGEリーマン
日経サイエンス
Wikipedia
<過去の記事>
第2回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その2 ~髪には神の力が宿る~
第3回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その3 ~カツラは衛生的な証?~
第4回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その4 ~人より髪を愛すフェチも~
第5回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その5 ~毛の美術品~
第6回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その6 ~斬新!?人毛活用法~