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健康 2018.07.25

異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その2 ~髪には神の力が宿る~

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私の名はジェイコブ一郎。

“コブ星”に住んでいる。

 

▲コブ星人“ジェイコブ一郎”

 

「頭」の毛が薄くて当たり前のコブ星に住む私にとって、人間の頭髪の量が私たちより多いことや、彼らが毛の量を気にすることが不思議でならない。

先週から、この疑問に立ち向かうべく人間の「毛」について調べ始めた。

 

今回は、「人間はなぜ毛にこだわるようになったか」をテーマに、昔からある文化や習慣について調べてみた。

 

第1回:薄毛は男らしさ!?

 

<今回分かったこと>
・毛深さで王様が決まる?髪を祭る人間のオモシロ風習
・髪には神の力が宿る?
・「髪がないと力がでない!」ギルガメシュ叙事詩
・自分と違う髪にビビるのは、髪のパワーを信じているから?

 

毛深さで王様が決まる?髪を祭る人間のオモシロ風習

一般的な人間は、髪は伸ばしっぱなしにすれば1メートル近くまで長くなる。

2010年亡くなってしまったそうだが、ベトナム人男性Tran Van Hayさんの髪は6.8mだったと言われる。

 

(c)Man ‘with world’s longest hair dies’ – Telegraph

▲手に持っているのは全て彼の頭髪

 

そこまで伸ばすのは珍しいが、人間が髪の毛を伸ばしたのは、昔からの習慣のようだ。世界各国の風習や、書物に残っている歴史を見るとそれが分かる。

 

 

<髪を伸ばす風習>

・日本の女性は殿方に会う時に扇で顔を隠す作法だっため、髪の長さで魅力をアピールした。

・中世メロヴィング王朝の王様は、戦士のなかで最も毛深く、髪と髭の一番長い男が王に選ばれる習慣があった。

・ローマ帝国のカエサルがこの地域を平定した時、禿げ上がっていたため、戦士たちに敬意を払われなかった。カエサルは彼らの髪を切らせ、髭を剃らせた。

 

 

<髪には特別な力があるという風習>

・古代ギリシアでは、神に髪やあごひげを奉納した。この儀式をしないと、結婚できなかった。

・ペトレマイオス三世は、出陣のときに、妻からお守りとして長い髪を贈られていた。

・日本で女性の長い髪は性的魅力のシンボルなので、未婚者は髪を伸ばすが、既婚者は髪を結うか切る。

→婚礼の花嫁の「角隠し(つのかくし)」は実は「髪隠し」。結婚したから髪で他の男性を誘惑するなという意味がある

 

 

 

髪には神の力が宿る?

なぜ、人間はそこまで髪を特別扱いするのだろうか。

その理由の手がかりを得ることができた。

 

●【日本の一説】上にあるものは尊い

 

日本では「髪」「神」「上(かみ)」が関係している。

 

天上に神がいると考えた日本人は、上にいるので神を「カミ」と呼んだ。

更に、人間の一番上にある毛髪に、人体の神が宿ると考えたので「髪」も「カミ」と呼んだ。

 

日本人にとって上にあるものほど尊く「上=髪=神」という考えがあったため、「髪」も特別な存在となった。

 

 

●【世界の一説】世界的にある一説

 

髪を神格化する考え方は日本と似ている。

 

太陽は地上の生命をはぐくむエネルギーだ。このエネルギーは太陽から発する“光の筋”として地上に届けられる。

古代人はこの光線を「太陽の髪の毛」だと考えた。髪の毛は自然の恵みを届ける神のような存在だったのだ。

 

そのため、色々な地域の太陽神(ギリシア神話のアポロン、インド神話のアグニ、アステカ神話のツォンテモク、ペルシア神話のミトラなど)は、皆長い髪を八方に伸ばしている。

 

髪は自然の恵みを届けたり、神の力が宿るものだと考えられた。

 

「髪がないと力がでない!」ギルガメシュ叙事詩

髪には神の力が宿るという有名な話は、古代メソポタミアの文学作品「ギルガメシュ叙事詩」だ。

(c)Wikipedia『The Chaldean Account of Genesis(1876年、ジョージ・スミス)』におけるギルガメシュの絵。

 

英雄ギルガメシュは、神の血が3分の2流れる勇者だ。ただ1年に1度だけ、病気になって毛が抜けてしまう。そうすると力が出ないので身を清める旅に出なくてはならない。

 

ある時、女神のイシュタルがギルガメシュに好意をいだき「夫になってくれ」と頼んだが、ギルガメシュは相手にしなかった。そこで女神は復讐を心に決めた。ギルガメシュの力が出ないように、彼を病気にかからせ髪の毛が抜けるように仕掛けた。

 

似た話は、なんと旧約聖書にもある。古代の神話や聖書で見ても、神の力が髪に宿ると信じられていたようだ。

 

 

自分と違う髪にビビるのは、髪のパワーを信じているから?

ちなみに現代社会でもその考えが残っている。

 

例えばアフロヘア、パンクの逆立った髪、異常な色や形の髪…。人間は、珍しくて目立つ髪形をうとましく思いながらも、どこかで恐れおののく気持ちが働くらしい。

 

 

神話や聖書の時の、髪には神や力が宿るという考えが残っているからかもしれない。

 

 

【ジェイコブの気づきと疑問】人間にとって髪は神なのか!?

 

■人間にとっての髪が特別すぎる

毛深さだけで王様が決まるなんて衝撃だった!

さらに、神に髪を奉納したり、戦争に行く夫にプレゼントしたり…どれだけ髪は偉いんだ!

 

■髪と神の関係の濃さに驚き

人間がやたらと髪の毛の量にこだわることは知っていたが、人間があがめる「神」に関連があったとは。

上にあるほど良いのか、光線はなぜ太陽の髪だと思われたのか、その点も気になる。

 

■珍しい髪はおののかれるのか?

珍しくて目立つ髪形は、うとましいけれど恐れおののかれるとは本当だろうか。これはきっと仮説でしかないだろう。

 

人間の毛は深くて、まだ調べることがたくさんありそうだ。次は今回分かった古代人やかなり昔ではなく、もう少し時代を進めて風習や文化を見てみたい。

 

 

<今回の学習書>

「髪の文化史」荒俣宏(潮出版社)

黒髪の文化史(大原梨恵子)築地書館

Wikipedia

 

第1回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その1 ~薄毛は男らしさ!?~

 

ジェイコブ 一郎

この記事を書いた人

ジェイコブ 一郎

頭髪が薄い生物が集まる“コブ星”の住人。 人間の「毛」へのこだわりが不思議なので、現在「毛」について研究中。

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