私の名はジェイコブ一郎。
“コブ星”に住んでいる。

▲コブ星人“ジェイコブ一郎”
「頭」の毛が薄くて当たり前のコブ星に住む私にとって、人間の頭髪の量が私たちより多いことや、彼らが毛の量を気にすることが不思議でならない。
先週から、この疑問に立ち向かうべく人間の「毛」について調べ始めた。
今回は、「人間はなぜ毛にこだわるようになったか」をテーマに、昔からある文化や習慣について調べてみた。
<今回分かったこと>
・毛深さで王様が決まる?髪を祭る人間のオモシロ風習
・髪には神の力が宿る?
・「髪がないと力がでない!」ギルガメシュ叙事詩
・自分と違う髪にビビるのは、髪のパワーを信じているから?
毛深さで王様が決まる?髪を祭る人間のオモシロ風習
一般的な人間は、髪は伸ばしっぱなしにすれば1メートル近くまで長くなる。
2010年亡くなってしまったそうだが、ベトナム人男性Tran Van Hayさんの髪は6.8mだったと言われる。

(c)Man ‘with world’s longest hair dies’ – Telegraph
▲手に持っているのは全て彼の頭髪
そこまで伸ばすのは珍しいが、人間が髪の毛を伸ばしたのは、昔からの習慣のようだ。世界各国の風習や、書物に残っている歴史を見るとそれが分かる。
<髪を伸ばす風習>
・日本の女性は殿方に会う時に扇で顔を隠す作法だっため、髪の長さで魅力をアピールした。
・中世メロヴィング王朝の王様は、戦士のなかで最も毛深く、髪と髭の一番長い男が王に選ばれる習慣があった。
・ローマ帝国のカエサルがこの地域を平定した時、禿げ上がっていたため、戦士たちに敬意を払われなかった。カエサルは彼らの髪を切らせ、髭を剃らせた。

<髪には特別な力があるという風習>
・古代ギリシアでは、神に髪やあごひげを奉納した。この儀式をしないと、結婚できなかった。
・ペトレマイオス三世は、出陣のときに、妻からお守りとして長い髪を贈られていた。
・日本で女性の長い髪は性的魅力のシンボルなので、未婚者は髪を伸ばすが、既婚者は髪を結うか切る。
→婚礼の花嫁の「角隠し(つのかくし)」は実は「髪隠し」。結婚したから髪で他の男性を誘惑するなという意味がある

髪には神の力が宿る?
なぜ、人間はそこまで髪を特別扱いするのだろうか。
その理由の手がかりを得ることができた。
●【日本の一説】上にあるものは尊い

日本では「髪」「神」「上(かみ)」が関係している。
天上に神がいると考えた日本人は、上にいるので神を「カミ」と呼んだ。
更に、人間の一番上にある毛髪に、人体の神が宿ると考えたので「髪」も「カミ」と呼んだ。
日本人にとって上にあるものほど尊く「上=髪=神」という考えがあったため、「髪」も特別な存在となった。
●【世界の一説】世界的にある一説

髪を神格化する考え方は日本と似ている。
太陽は地上の生命をはぐくむエネルギーだ。このエネルギーは太陽から発する“光の筋”として地上に届けられる。
古代人はこの光線を「太陽の髪の毛」だと考えた。髪の毛は自然の恵みを届ける神のような存在だったのだ。
そのため、色々な地域の太陽神(ギリシア神話のアポロン、インド神話のアグニ、アステカ神話のツォンテモク、ペルシア神話のミトラなど)は、皆長い髪を八方に伸ばしている。
髪は自然の恵みを届けたり、神の力が宿るものだと考えられた。
「髪がないと力がでない!」ギルガメシュ叙事詩
髪には神の力が宿るという有名な話は、古代メソポタミアの文学作品「ギルガメシュ叙事詩」だ。

(c)Wikipedia『The Chaldean Account of Genesis(1876年、ジョージ・スミス)』におけるギルガメシュの絵。
英雄ギルガメシュは、神の血が3分の2流れる勇者だ。ただ1年に1度だけ、病気になって毛が抜けてしまう。そうすると力が出ないので身を清める旅に出なくてはならない。
ある時、女神のイシュタルがギルガメシュに好意をいだき「夫になってくれ」と頼んだが、ギルガメシュは相手にしなかった。そこで女神は復讐を心に決めた。ギルガメシュの力が出ないように、彼を病気にかからせ髪の毛が抜けるように仕掛けた。
似た話は、なんと旧約聖書にもある。古代の神話や聖書で見ても、神の力が髪に宿ると信じられていたようだ。
自分と違う髪にビビるのは、髪のパワーを信じているから?
ちなみに現代社会でもその考えが残っている。
例えばアフロヘア、パンクの逆立った髪、異常な色や形の髪…。人間は、珍しくて目立つ髪形をうとましく思いながらも、どこかで恐れおののく気持ちが働くらしい。

神話や聖書の時の、髪には神や力が宿るという考えが残っているからかもしれない。
【ジェイコブの気づきと疑問】人間にとって髪は神なのか!?

■人間にとっての髪が特別すぎる
毛深さだけで王様が決まるなんて衝撃だった!
さらに、神に髪を奉納したり、戦争に行く夫にプレゼントしたり…どれだけ髪は偉いんだ!
■髪と神の関係の濃さに驚き
人間がやたらと髪の毛の量にこだわることは知っていたが、人間があがめる「神」に関連があったとは。
上にあるほど良いのか、光線はなぜ太陽の髪だと思われたのか、その点も気になる。
■珍しい髪はおののかれるのか?
珍しくて目立つ髪形は、うとましいけれど恐れおののかれるとは本当だろうか。これはきっと仮説でしかないだろう。
人間の毛は深くて、まだ調べることがたくさんありそうだ。次は今回分かった古代人やかなり昔ではなく、もう少し時代を進めて風習や文化を見てみたい。
<今回の学習書>
「髪の文化史」荒俣宏(潮出版社)
黒髪の文化史(大原梨恵子)築地書館
Wikipedia
第1回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その1 ~薄毛は男らしさ!?~