私の名はジェイコブ一郎。
“コブ星”に住んでいる。
▲コブ星人“ジェイコブ一郎”
「頭」の毛が薄くて当たり前のコブ星に住む私にとって、人間の頭髪の量が私たちより多いことや、彼らが毛の量を気にすることが不思議でならない。
私はこの疑問に立ち向かうべく人間の「毛」について調べている。
今までのリサーチの中で、人間は髪に特別なパワーがあるとして「悪霊払い」「呪い」「愛を綴る」のように様々な用途で利用していることが分かった。
今回は「髪や人毛の活用法」の中で、まだ登場していないけれどもユニークだと個人的に感じたものをまとめてみた。
髪の毛を捨てるだけなんて、もったいない!
人間の髪の毛の平均的な本数は10万本程度だ。
その10万本が1ヶ月で平均1.2cm、1年で14cm伸びる。重さにして100gをちょっと超えるぐらいだ。
日本人の人口を1億2000万人とすると、年間で日本人計1200万キログラム(12,000トン)分が伸びることになる。(※髪が伸びない人を無視した場合の計算なので参考値。)
世界には、こんな風に日々伸びる髪を「そのまま捨てては、もったいない」「資源になる」と考える人間がいるようだ。
それでは、髪や人毛の意外な活用方法を見ていこう。
《髪の活用》商業・環境編
■肥料・除草剤
元ヘアスタイリストが「人毛マット」を考案した。このマットは植物の根元に置けば有機成長剤、地面に置くと除草剤の効果がある。
うまく使えば化学薬品を含む肥料や除草剤を減らすことができる。
古代中国の農民が、作物の栄養として人毛や排泄物を与えていたのと類似したアイディアだ。
出典:A sorel plant hairmat – Dan Grech/Marketplace
■害獣駆除
アメリカ、インド、中国では、かなり昔から害獣駆除に人毛を使ってきた。
洗っていない新鮮な人毛をナイロンの袋に詰めて、庭に置いたり、つるしておいたりすると動物たちを追い払うことができるのだ。
ただし臭いは2週間ほどしか持たないので、頻繁に新しい毛を補う必要がある。犬や猫の毛を混ぜると、より効果的だという話もある。
■流出した石油の吸着
アラスカで石油の流出事故が起こった。
その時、カワウソの毛に石油がべっとり染み込んでいるのを見た人が、人毛で石油の吸着ができるのでは?と考えた。
さっそく2キロ以上の人毛を、女性用ストッキングに詰めて実験したところうまくいった。
出典:ScienceDaily
このアイディアをうまく活用すれば、環境にやさしくコストを抑えて石油を吸着することができる。
《髪の活用》生活・娯楽編
■しょうゆ
日本の毛髪科学者、大門一夫氏(1918年 – 1992年)は、人毛を原料とした人毛醤油の研究をした。
残念ながら(?)実用化されなかったが、中国では人毛が安価に入手できるため、人毛でアミノ酸溶液を作り醤油の原料としていた。
この人毛は国内の美容院や理髪店、病院から集められており清潔ではなく、特に染色した毛は身体に有害だったため、中国政府は人毛醤油の製造を禁止。
それにも関わらず、悪徳商人による人毛醤油生産は完全になくなっていないという説がある。
■お香
古代インドでは、人毛をお香に使っていた。人毛、しょうが、香りのよい葉や樹液を混ぜて火をつけると悪霊を落ち着かせると信じられた。
また、あえて豚の排泄物など臭いものを人毛と混ぜて燃やすと、悪魔が悪臭を嫌がって逃げるとされた。
■人毛・陰毛服
とある理容師が、お客の髪を集めて服を作った。ビキニを作ったが試着をした妻に「チクチクする」と文句を言われたそうだ。それでも懲りずに、帽子、下着、シャツなどをどんどん作った。
また、2016年に陰毛でトップとスカートを作り、1万3000ドルで売ろうとした女性もいる。
自身の陰毛では当然足りないので、Twitterで陰毛を募集。予想に反して続々と集まった陰毛で6ヶ月をかけて作ったという。
※画像はFacebookより
インスピレーションはレディー・ガガの生肉ドレス。それを見た彼女は「生肉ドレス以上に不快な服を目指そう」と考えたそうだ。
■ヘアメガネ
英国の美術大学の世界最高峰「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」の卒業生が、美容院や床屋で廃棄されている髪の毛を有効利用して「ヘア眼鏡」を作った。
よく見るとフレームに髪の毛が入っている。人間の髪の毛に結合材として植物性樹脂を使っていて、フレームは100%の生分解性なのでエコだ。
出典:gigazine.net
■楽器の弦
フィリピンに昔から住むマンヤン族の楽器に、「ギトギト」というものがある。3弦のバイオリンに似たもので、弦に人毛を使っている。
この楽器は男性が女性を口説くときに使う。男性が女性の家に到着したことを伝えるために奏でるのだ。
最近では、実験アーティストのタダス・マクシモヴァス氏が「ヘア・ミュージック」という試みをした。
人間の髪がくっついた状態で楽器として奏でるのだ。
出典:Creators
自分の長髪を糊づけして繊維状の糸にし、それを通常のバイオリンのように糸巻きに巻きつける。そして、演奏家に頼んで髪の弦に弓を当てて引いてもらった。ユニークな試みの一方で、マクシモヴァスは、自分の長い髪の一部を失ってしまったそうだ。
糊で固めたのだから当然とも言える。
【ジェイコブの気づきと疑問】
■毛の「資源」としての有用性に驚き
人間の毛が「肥料・除草剤」「害獣駆除」「石油吸着」に使えるとは!資源としての可能性に驚いた。ただ、たくさん集めるのが大変そうだし、商売として成り立つのか懸念がある。
■知らずに「人毛醤油」を食べているかも…?
毛がほとんどアミノ酸でできているとはいえ、他人の毛から生まれた醤油は人間でない私が考えても気持ち悪い。知らないうちに、私も人毛醤油を口にしているかも…。
■人間は、切られた毛にまで思いを持つ生き物
人間は生きている毛だけでなく、切られた毛にも凄く関心がある。伸びてしまったものをゴミとせず、資源だ、日用品だに変えてやるぞという思いの強さを感じる。
今回は「髪や人毛の活用法」を調べてまとめてみたが、服、楽器、お香と毛で色々なものができると思うと、「毛」がより身近に感じられる。コブ星人の私にも誕生した時から毛が生えていたのに、今さら親近感を抱くとは不思議な気持ちだ。
私の毛の不思議に迫る旅は、まだまだ続く。
<今回の学習元>
美髪育成塾
カラパイア
GIGAZINE
<過去の記事>
第1回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その1 ~薄毛は男らしさ!?~
第2回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その2 ~髪には神の力が宿る~
第3回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その3 ~カツラは衛生的な証?~
第4回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その4 ~人より髪を愛すフェチも~
第5回:異星人ジェイコブの「なぜ人間は薄毛対策にこだわるのか」髪の毛の謎に迫る旅 その5 ~毛の美術品~