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2018.08.17

紫外線が私を美しくしてくれる?
「美の起源」古代ギリシャでもっとも重視された美的特徴とは?
堀江宏樹の世界ビューティー迷子録(3)

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メイクする時、あなたが一番こだわっている部分はどこでしょうか?

 

現代日本ではアイメイクに凝る人が多いようですが、そこだけでもきちんと調えておけば「キレイ」と思ってもらえる”化粧のポイント”は時代・地域によって変わりました。

 

たとえば「美の起源」と呼ばれる、古代ギリシャ時代。

 

スラリとした体型、八頭身に近ければ近いほどよいという小顔、さらに長い手足の持ち主こそがベストという、現代日本でも通用する美のルールが生まれたのが古代ギリシャです。では、その古代ギリシャで、もっとも重視された美のポイントは……というと、それは金色の髪だったのですね。

 

古代ギリシャでは金色の髪は、知と権力の象徴とされました。しかし……現代のようにひとたび髪につければ化学反応が起き、髪色を思いのままに変えることができる薬品などなかった古代ギリシャで、人々は髪色をどうやって変えていたのでしょうか。

地中海に降り注ぐ太陽で、命がけの「UVブリーチ」

当時、髪を金色にするには命がけでした。

 

ギリシャといえば地中海特有の強い日光がふりそそぐ土地ですが、その真昼の太陽光に髪と頭をえんえんとさらし続けるしかないのです。

ハトの糞などが髪を金色にするためのクスリとして塗られることもありましたが、しょせんは気休め程度。

 

基本的には太陽光の熱と紫外線に髪がやられ、ボロボロになって、脱色がはじまり、その結果、色が少しでも明るくなったら成功!! という実に気力・体力勝負の世界だったのですねぇ。

さすがヌード彫刻で有名な古代ギリシャ、「脳まで筋肉かよ」的な直球っぷりです。

 

 

そんなことまでしてなぜ?!と読者は思われるでしょう。

意地悪な言い方をすれば、いくら八頭身とか長い手足の持ち主が美しいといわれても、決してマネができるものではありません。

 

また、どうしてふつうのメイクではなく、髪色なのかと思う読者もいるでしょう。そこには男性にこそ美を求めがちだった、古代ギリシャの少々ゆがんだ美意識がありました。

 

 

古代ギリシャの多くの都市国家では男尊女卑が貫かれていました。少なからぬ数の男性が同性とのラブに溺れ、女性との結婚は子孫をのこすためのつながりにすぎない……極端にいえばそんな文化すらある古代ギリシャ社会で、多くの女性は家の中で閉じ込められるようにして過ごすしかありませんでした。

 

ちなみにギリシャ時代のオリンピック選手が全裸でがんばっていましたが、女性には観戦の機会すらありませんでしたからね。

 

 

そんな環境下で女性が目立つ化粧をしようものなら「なんだその化粧は」式に、夫や家族から注意されてしまうことも多かったのです。ちなみに当時、濃い化粧が許された女性といえば、娼婦くらいなものでした。

 

美のルールから外れて生まれた素人女性が自分を少しでも魅力的に見せようと努力できるのは、金色の髪にすることくらいしかなかったという現実があったのです……

 

女性と書きましたが、実際は男性だって同じことをして志半ばで熱射病で倒れたり、生き残っても紫外線の害でシミ・ソバカス・シワのオンパレードに苦しめられていたのです。

 

美しくなるには「何か」を犠牲にせねばならない……という現代に通用する美の裏ルールが誕生したのも、「美の起源」古代ギリシャでした。

 

 

 

 

 

堀江宏樹

この記事を書いた人

堀江宏樹

歴史エッセイスト。日本、世界、古代、近代を問わず、歴史の持つ面白さを現代的な視点、軽妙な筆致で取り上げている。 近著に『乙女の日本史』シリーズ(KADOKAWAなど)、『本当は怖い世界史』『本当は怖い日本史』『ときめく源氏物語』(三笠書房)、『偉人はそこまで言ってない 歴史的名言の意外なウラ側』(PHP研究所)など。 7月下旬に新刊『本当は怖い世界史 戦慄篇』が三笠書房から発売予定。

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