私の名はジェイコブ一郎。
“コブ星”に住んでいる。
▲コブ星人“ジェイコブ一郎”
“コブ星”では、人間で言う「頭」の毛は、薄い事が当たり前。私はコブ星の中では毛が多い方なので、少し恥ずかしい気さえしている。
しかし地球に住む人間は、何故か「頭」の毛が私たちよりも多い!
更にその毛が薄いと嫌がったり、気にしたり、増やそうとしたり。すごいこだわりだ。
毛が薄くて当たり前な私にとって、これは衝撃だ。姿形の似ている私たちと、人間との違いは、一体何なのだろうか。この違いはいかにして生まれたのか。
どうしても知りたくてならない。
その疑問を解決すべく、地球で人間の「毛」について勉強することにした。
まずは図書館で本あさりからだ。
<今回分かったこと>
・人間文化が発達した理由の一つは「毛」
・一人あたり約500万本の毛が生えているらしい
・ヒトは“水中生活”のために毛をなくしたのか
・ヒトの毛は増えることがない
人間文化が発達した理由の一つは「毛」
「毛」は、陸の哺乳類以外の動物にはほとんど見られない。
爬虫類、両生類、魚類、昆虫…確かに毛がない。
裏を返せば、「毛」は哺乳類のシンボルだ。
そんな中でヒトは、哺乳類の特徴であるはずの「毛」をあえて目立たせず肌を露出している。
理由は明確に分かっていないが、「肌が露出しているから」文化が発達したという説がある。肌が露出しているからこそスキンシップが生まれ、コミュニケーションが進化したと言うのだ。また、代謝による熱の発散も早く、暑い日中の活動ができるため文化の発達が早まったと言う。
一人あたり約500万本の毛が生えているらしい
このように、文化の発展に影響したとも言われる肌の露出だが、毛が残った場所もある。
その数は生毛のように見えにくい毛を入れて、一人あたり約500万本。つむじを起点に水が流れるような配列を作って生えている。
古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、毛が生えていることに着目した。
毛の存在理由は身体を保護するものだと考えていた。まつ毛は眼球を、髪の毛は頭を、体毛はそれぞれ生えている場所を守っているという説だ。
しかし、陸の哺乳類はそもそも毛が生えているもの。
毛が生えていることよりも、毛をなくした(正確には目立たなくして肌を露出させた)ことの方が不思議だ。そこで学者によっては、何故「毛をなくしたのか」という理由を研究している。
ヒトは“水中生活”のために毛をなくしたのか
人間が毛を目立ちにくくして肌を露出した理由には諸説ある。3つの例を挙げてみよう。
●一部の生理学者
・放熱の効率を上げるため
・皮膚に付く寄生虫から逃れるため
●チャールズ・ダーウィン説
(性の進化論の立場から)異性へのアピールの際に毛が邪魔にならないように。
●動物学者D・モリス
ヒトは一時期、水中生活を送っていた。身を護りやすく食料が得やすい水中で、息継ぎしやすい直立歩行になり、水の抵抗が邪魔なので毛が減った。
また、水面上の髪は直射日光を避けるために残った。
ヒトが水中生活を送っていたとはユニークな仮説!ただ、何が本当か解明はされていないし、複数の仮説が当たっているかもしれない。
ヒトの毛は増えることがない
この人類の進化の過程で濃いところと薄いところがある「毛」だが、数はどのように決まっているのだろうか。
実は、前述した通り、ヒトの毛は一人あたり約500万本。生まれた時に全て揃っていて、増えることはない。
成長過程で毛が増えたように見えるのは、生毛ではなく「黒い毛」になっていっただけ。逆に、毛が減ったように見えるのは、「黒い毛」を作らなくなったためだ。
また、「毛」自体は生きていない!
ケラチンというたんぱく質でできている。皮膚の奥に隠れている「毛球」と呼ばれる部分が、たんぱく質で毛を作っているのだ。
そのため、毛を切っても痛くないけれど、無理やり抜くと「毛球」を傷つけて痛みを感じる。
そして「黒い毛」の量は男性ホルモンに影響される。
髭、胸毛、すね毛…。
男性ホルモンは体毛が濃くなるように作用する。一方で頭髪に対しては、毛の生え変わりをストップするように作用するのだ。
体毛は濃く、頭髪は薄くという作用につながる男性ホルモン。一つの要素でもまったく逆に働くのは不思議なことだ。
【ジェイコブの気づきと疑問】頭髪の薄さは“男性らしさ”ではないか
■毛と文化という視点が面白い
肌が露出しているから文化が発達した説は、コブ星でも言えそうだ。
私たちも毛が薄いし、文化も人間と同じぐらいは発展している。毛にフォーカスしたことがなかったので、新鮮!
■毛は多い少ないではなく、薄い濃いなのか
なんと、毛が生まれた時点で生え揃っているとは。コブ星の皆は頭の部分の毛が「少ない」と思っていたが「(毛の色が)薄い」が正しいらしい。
毛を調べるにあたって数だけではなく色にもフォーカスして、人間との違いを知らねばならない。
■頭髪が薄いのは男性らしさではないのか
男性ホルモンが人間の頭髪を薄くするなら、それは男らしさと言えないのだろうか。それなら頭の毛が薄くて良いのではないのか?
なぜ、人間がそこまで毛の量にこだわるのか謎は深まった。
人間の毛については、まだまだ調べることがたくさんありそうだが、次は人間が毛にこだわる理由を、歴史や文化的な背景から調べてみたい。
<今回の学習書>
「髪の文化史」荒俣宏(潮出版社)