芸人高齢化社会を迎える日本
筆者は芸歴10年を超えており、年齢は35歳の“売れたい芸人”である。
30歳の時にコンビを解散し一度は芸人の道を諦めたが、ちょうどその時に今の相方と出会い芸人を続けることにした。そして未だ心は折れず続けているが、将来が不安になることは日に日に増えてきている。
そんな筆者を含めてまだ世間に認知されていない若手芸人は数多くいる。
その中の多くが30代~40代となってしまっているのである。この「芸人高齢化」はただの問題ではないのだ。
売れていない芸人はアルバイトで生活費を稼いでおり、ギリギリの生活をしている。それゆえ国民健康保険の軽減や年金の支払いの免除などを受けている場合が多い……つまり、芸人は社会に守られる存在になりつつあるということだ。
今後もますます芸人は増え高齢化は進むであろう。そのうち若手芸人の高齢化が日本の社会問題にもなるかもしれない。
今日はそんな「芸人高齢化社会」について皆に伝えたいと思う。
上が詰まりすぎ、の芸人業界
芸人には定年がない。ビートたけし、明石家さんま、タモリのBIG3を始め、ダウンタウンやウッチャンナンチャンなど、ベテランが活躍し続けている世界である。そして、なかなかいなくならない。
昔は、芸歴10年を超えたら中堅芸人、芸歴20年を超えたらベテラン芸人として扱われていたが、現在では芸歴20年でも若手として扱われることもある。20歳の若手芸人が売れないまま40代に突入するということが頻繁に起きているのだ。
先日行われたキングオブコント2018(TBS系)の出場者を見てみると、最年長はロビンフットの2人で42歳、最年少は優勝したハナコの秋山が27。平均年齢は35.5歳であった。
ちなみに、第1回であるキングオブコント2008の最年長はバッファロー吾郎竹若の38歳で、最年少は2700八十島の24歳、当時の平均年齢は31歳であった。これらのことからも芸人全体の年齢が上がってきていることがわかる。
高齢化の原因は、簡単に「芸人」になれること
そんな「芸人高齢化」の一因は、大手芸人事務所が開校している「養成所」にある。昔は芸人になるためにはまず、尊敬する師匠に弟子入りすることだった。しかし、全員が弟子になれるわけではなく、選ばれたものしか芸人になれなかったのである。
それが今は養成所に入れば事務所所属への道が開かれるので、「芸人になること」自体のハードルはかなり低くなっている。養成所出身の売れている芸人が資料にコメントを載せていたり、養成所に入れば番組のエキストラとして売れている芸人に会えるチャンスがあるといった情報を発信しているので、養成所に集まる芸人志望者は後を絶たない。
芸人を始める人は爆発的に増えているが、ほとんどがそのまま売れずに年齢を重ねていく。
上が詰まっているので若手芸人が出る機会はごく限られており、出る枠があったとしても賞レースで結果を残した若手や知名度がある決まった若手しか呼ばれないというのが現状である。
あなたの知らない「ライブ芸人」の世界
若手芸人の登竜門は各事務所が開催するライブであるが、そこでも高齢化は著しい。
かつては、そこから人気に火が付きテレビ番組に出るようになるとライブに出ることはほとんどなかった。しかし、今ではテレビに出る機会がないのでライブシーンで活躍する40代芸人が各事務所に大量にいるのである。
ライブシーンでは有名でも世間には認知されていないためテレビに出た時にベテランの若手芸人のようになるのである。
例えばR-1グランプリ(フジテレビ系)で優勝したハリウッドザコシショウや アキラ100%は、40歳を過ぎているが、いまだ若手芸人のように扱われている。
行きも戻りもできない“40代芸人”
他にも多数の“40代若手芸人”がいるが、決して多くないテレビ出演で、彼らと同年代の売れている芸人の番組にゲストで呼ばれ、ドッキリを仕掛けられるなど、無茶をさせられることもある。
たまに開かれるお笑い番組のオーディションでも、100組受けて受かるのは4、5組であることはザラ。
驚くことに合格枠が0のオーディションも存在するのである。
これは既に売れている芸人が出演者として決まっており、その他に100組~200組の芸人を見て番組のコンセプトに合う芸人がいたら採用しようというオーディションなのだ。これらのオーディションはかつて20代の芸人でひしめき合っていたが、今は30代~40代が当たり前となっている。
このような現場を目の当たりにすると、30歳前後で心が折れて辞めてしまうという芸人が現れる。
30歳の壁を乗り越えたとしても現状は変わらず40代に突入してしまう。この年齢になると他の職を探すのが難しく、芸人を辞めたくても辞められないという現象が発生する。このようにして芸人の高齢化は歯止めがきかなくなっているのだ。。
芸人は続けていても売れるとは限らない。しかし続けないと売れない。
……厳しい世界である。