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健康 2019.03.27

【少し閲覧注意】え、そんなもの飲むの……?
小野小町も実践していた(かもしれない)衝撃の平安時代アンチエイジング事情
〜堀江宏樹の世界ビューティー迷子録(12)

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「世界三大美人」という言葉を聞いたことはありませんか?

 

クレオパトラ(7世)、楊貴妃、小野小町……と答えるのは実は日本人だけで、世界三大美人のいわば「日本版」です。

 

ちなみに「世界版」は、クレオパトラ、楊貴妃、ヘレネー(トロイ王国の王妃)とする場合が多いようで、ジャパニーズビューティー・小野小町は残念ながら、世界に認められていないわけです。

 

▲小野小町(生没年不詳)

 

小野小町は才能にも美貌にも恵まれ、それゆえ異様にプライドが高く、男を拒み続けたキャラとして有名です。たとえば深草少将という名前の男性と会ってあげる、つまりセックスしてあげると口約束するかわり、百日もの間、男を自分の屋敷に呼びつけ続け、門前払いし続けたというエピソードが独り歩きしているわけです(いわゆる百夜通い伝説)。

 

このエピソードでは99日目の夜、例の深草少将は無理がたたって発病、小野小町を恨みながら死んでいきましたけれど、彼は実在の人物ではありません。逸話も室町時代に、能楽師の世阿弥が作った「創作」です。

 

小野小町は『古今和歌集』に作品が収められていますから、実在したことは確かだと思われます。しかし、この手の「高慢な美女」というキャラクター自体、才能も美貌もある女に対する世間のヤッカミで生まれてしまった気がします。

 

そもそも“小野小町”とは「小野家の女性」というような意味で、彼女が「こまち」という名前だったということにはなりません。要するに完全に謎の女なのでした。

 

小野小町には「美人薄命」どころかえらく長生きしすぎて、老残を晒してしまったという伝説まで残されています。そもそも、平安時代にはアンチエイジングってなかったのでしょうか?

 

腸の中まで金色になる(?)平安時代の霊薬

実際のところ、平安時代の日本にはアンチエイジング術はすでに存在していました。しかし、効果があったかは疑問です。わりとマネしてはいけない魔の知識、みたいなところがありました。

たとえば上流階級に人気だったのが「金液丹」。これを飲めば、様々な病気はおろか、不老長寿にも効く!と口コミで広まりましたが、主成分がなんと金や水銀。金箔はお酒などにも入っていますからともかく、水銀は絶対に飲んではいけないものです。

 

しかし中国から入ってきたこのおクスリ、「長期服用したら腸の中まで金色になれるよ」という謎効果が当時の日本人にも魅力的だったのでしょうか。

人気のわりに超高価だったので日本ではあまり、飲まれてはいなかったようです。ただし、平安時代に変死したエピソードのある貴人はこっそり飲んでいた……かもしれません。

 

日本のアンチエイジングは「食べ物」から。だけど…

日本でアンチエイジングに使われたのは食材でした。

 

このため、小野小町にも「鯉料理を好んだ」という逸話があります。当時の医学書『医心方』にも「鯉は気血を増強する」食べ物として紹介されています。いわば精力剤の類ですね。鯉料理だけでなく、その生血をすする場合もありました。現代人の目にはホラーです。

 

そもそもアンチエイジングっても下半身だけ若くても仕方ないから、顔の話をしてよって思うかも知れませんが、ちょっと待った。なぜ鯉なのでしょうか。

 

最近はタンパク質を摂ることが、重視されるようになりましたが、平安時代は現代とは真逆といえる状況でした。平安時代の「延喜式」(927年成立)には、馬、うし、ひつじ、犬、ぶた、にわとりの肉(六畜とよびました)を食べたら、三日間の謹慎刑すら課されました。

 

ただし、畑をあらす害獣のシカやイノシシの肉を食べてはダメとは書かれていません。例の「延喜式」にも各地の名産品としてそれらの獣の干し肉の記載があり、神社にお供えする品にも干し肉が選ばれているため、「珍味」とか「薬」のあつかいで動物性タンパク質を摂る機会はあるにはあったようです。

 

海から遠い地域で、気軽に養殖できる淡水魚の鯉などは、貴重な動物性タンパク源だったようなんですね。

 

ちなみに「鯉すら殺したくない!」という人には、サトイモが『医心方』ではオススメされております。「あのネバネバが効く!」という現代でも信じられているアレの源流でしょうか。「皮膚に張りを与える」などの効能に注目があつまっていたのです。

“精のつく”里芋の恐ろしい罠

ただし、効果が強いと考えられるサトイモゆえに、恐ろしい側面もありました。三年植えっぱなしにした株から取れたサトイモは「野芋」とよばれ、これが猛毒。「食べたら死ぬ」と信じられていたのです。

 

ちなみにサトイモ食べて元気に、キレイになろうとしていても、それが猛毒の「野芋」だった場合、死んでしまいかねません。解毒薬として使われたのが、人糞を溶かした水でした。飲むくらいなら静かに死なせてほしいです。むしろ、うんこ水を飲んだほうが病気になって死ぬ人がいると思われるのですが……この手の水薬を飲んで、運わるく意識がなくなっても『医心方』には処方が紹介されてるので大丈夫なのでした。

 

たとえ、それが首つり後のグッタリ状態でも男は右、女は左の鼻の穴にネギの芯を、血がダラダラと流れ出るまでツッコめばいいのです。

 

※マネしてはいけません

 

イラスト/メイミー

 

むしろ放置しておいて……って筆者は思うのですが、日本の古典文学では瀕死の状態でも医者が出てこず、加持祈祷が重視されるのは、この手のリアルな理由があるのかもしれません。

光源氏が息を引き取った女たちの鼻の穴に、ネギを突っ込んでいる姿なんて絶対に描かれてはいけないシーンですもんね。

 

小野小町とは遠い遠いところにまで話が来てしまいましたが、まぁいいか。

 

それではまた次回。

 

堀江宏樹

この記事を書いた人

堀江宏樹

歴史エッセイスト。日本、世界、古代、近代を問わず、歴史の持つ面白さを現代的な視点、軽妙な筆致で取り上げている。 近著に『乙女の日本史』シリーズ(KADOKAWAなど)、『本当は怖い世界史』『本当は怖い日本史』『ときめく源氏物語』(三笠書房)、『偉人はそこまで言ってない 歴史的名言の意外なウラ側』(PHP研究所)など。 7月下旬に新刊『本当は怖い世界史 戦慄篇』が三笠書房から発売予定。

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