検索

価値観 2019.02.28

世界を変える人が拓く道 ~【真鍋 大度】perfume、オリンピック…常に想像を上回るメディアアーティスト~

10

 

最近よく聞かれるようになった「メディアアート」

 

コンピューターなどの最新テクノロジーを活用した芸術表現全般を指すため、幅は広い。コンピューター・グラフィックス(CG)の映像や音響を組み合わせるマルチメディアアートや、鑑賞者が触れたり、動いたりすると作品が変化するインタラクティブ(双方向)アートと言えばイメージできるだろうか。

 

様々な分野で技術が急速に進化しているため、この「メディアアート」の世界もどんどん広がってきている。今ではVR、AR、ドローンも芸術に活用され10年前では想像もできなかった世界を作りだしている。

 

「メディアアート」が日本でほとんど認識されていなかった時代から、この分野に力を注ぎ、今では世界的に非常に高い評価を受けているメディアアーティストがライゾマティクスリサーチの真鍋大度氏だ。

 

© IAMAS「OG Interview」

 

真鍋氏と言えば、テクノポップユニット「Perfume」のライブ演出や、「リオデジャネイロオリンピック」のセレモニー演出、その他にも世界のアーティストとコラボレーションをしたり、トップブランドのコレクションを手掛けたりすることで知られる。国内外でカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル銀賞(2013)、グッドデザイン賞(2013)、文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門大賞(2012)など受賞作も多い。

 

▼リオ五輪閉会式で披露された2020年の東京大会プレゼンテーション

真鍋氏はAR(拡張現実)技術などによる演出を担当。AR演出では実際のスタジアムの中継画像と、CGで描かれた33種目の競技をリアルタイムで融合させた。

©ライゾマティクスリサーチ

©NHK/(https://www.youtube.com/watch?v=sk6uU8gb8PA)より

©NHK/(https://www.youtube.com/watch?v=sk6uU8gb8PA)より

 

常に新しくわくわくする演出をしてくれる真鍋氏はなぜ人々の想像を超える作品を生み出すことができるのか。彼の信念や思考に迫る。

 

 

“見たことのないものを見せる”

私が真鍋氏に注目したきっかけは「perfume」のライブだ。YouTubeで演出を見て、その想像力に度肝を抜かれた。

 

それからと言うもの「perfume」のライブはアルバムが出るごとに行っている。「perfume」だから行っているというより、真鍋氏の力が存分に発揮された圧倒的な舞台芸術だから行っているのかもしれない。

 

そんなに凄いの?と思われた方に、ぜひ見ていただきたいのが世界最大規模のフェスティバル「SXSW 2015」に「perfume」が出演した時の映像だ。合成ならともかく、これが「生配信」の映像なのだから驚きだ。

 

©Amuse Inc./UMPG Publishing

 

真鍋氏の作品はいつも想像を超えてくる。今まで見たことがない世界を見せてくれるから、つい歓声をあげてしまうのだ。このように彼が今までなかったものを生み出す力の源には“探求心”があるようだ。

 

人を感動させるためには、見たことのないものを見せるのが一番なんです。もちろん期待されているものは見せなきゃいけないですけど、見たことないものを見たときに人は「わぁ」ってなることが多い。それを作るためには、常に新しいネタを作らないといけないですね(CAREER HACKインタビューより)

 

こんな思いから、彼は新しい仕事を手掛ける際に、必ず先行事例を調べぬく。例えば多く関わっているダンスひとつを取ると、今まで存在したダンスの演出方法を徹底的に調べて、「起源」「変遷」「流行」について考える。それらを参考にしながら違う形に進化させているのだ。

 

▼過去のダンスの演出を調べてまとめている様子

© Nash Music Library/AdRev for a 3rd Party/AdRev Publishing

 

彼がアイディアを出すためには、まだまだ色々なことをしていると思うが、事例を徹底的に調べるというのはとても重要だし、簡単にできるようでなかなかできないことだ。常に「新しいネタで人を感動させたい」という強い思いを持ち、そのアイディアを出すために徹底的な探求をしているからこそ、人々の想像を超えたパフォーマンスが生まれるのだ。

 

 

実験の繰り返しで既成の概念を覆す

彼はこれらのアイディアを具体的に形にする過程として、常に研究や実験をしている。「株式会社ライゾマティクス」の中でも真鍋氏が率いる「ライゾマティクスリサーチ」に「リサーチ(研究)」という名前をつけているのだから、単に演出をしたいのではなく世の中に生み出せることを研究したいのだと思う。

 

面白い実験だと思ったのは真鍋氏がネットで有名になった、電気刺激装置「electric stimulus to face」 (2008年)の映像だ。

 

©daito manabe

 

顔に電流を流して動かすという実験なのだが、面白いからという理由だけでやったのではない。スマイルシャッター付きのカメラを見て、「笑顔検出機能」に疑問を持ち、情動について有名な James-Lange theory (ジェームズ=ランゲ説) 「楽しいから笑うのか、笑うから楽しいのか」に行き着いた。感情が先か、ジェスチャーが先か。仮に笑うから楽しいのであれば、自分の感情が他人にコピー出来るはずだと考え、可能性を見出すために行ったそうだ。

 

実験なのか、アートなのか。線引きは難しいか実験を重ねているからこそ、新しい要素がどんどん組み合わされていく。

2016年に公演が行われた「border」も、先端技術の幾つもの要素を組み合わせた代表作だ。

 

これはダンスパフォーマンスではあるものの、AR(拡張現実)技術を駆使した斬新なアートだ。観客はVRのヘッドセットをし、WHILLというパーソナルモビリティに座ってダンスを楽しむ。観客を動かす、ARを駆使するなど、ダンスパフォーマンスの既成の概念を覆す作品だ。

 

▼「border」

©daito manabe

 

▼2018年表参道スパイラルホールで行われた「discrete figures」

AR、ドローンが組み合わさった斬新な作品

©daito manabe

 

 

「圧倒的にすごいものを作る」ただそれだけ

圧倒的にすごいものを作っていれば、それ以外は何も必要が無いと思います。(HIGHFLYERSインタビューより)

 

真鍋氏はこんな言葉を言っている。

人を感動させる作品を生み出す。ただそれだけに集中しているから、自然にこんな言葉が出るのだろう。

 

彼はニーズがあるからやるのではない。便利だから作るのでもない。

ただ、面白い作品を生み出して人を感動させようとしているのだ。

 

そんな姿勢に、活動を始めた当初(2006年ごろ)は「スゴいけど、その技術、どうやってお金にするの?」と言われ続けたそうだ。それでも、信じてやり続けた結果、電気刺激装置の実験が話題となったり、2010年から「perfume」の演出担当に抜擢されたりとチャンスをつかんできた。

 

すべてにブレがなく、いつも夢中でいるから、必要な人脈やチャンスがついてくるのだ。

 

今、彼は世界を飛び回りながら新しい実験を繰り返し、想像を超えるパフォーマンスを生み出している。昨年末から年始(2019年)にかけては、国内初となる美術館個展も開催し、大反響を呼んだところだ。

 

彼が生み出す演出やアートは常に進化している。これからの作品も私たちの想像を超えてくることに期待したい。

 

 

Nancy

この記事を書いた人

Nancy

ライター、PRプランナー。 日経BP社「IT pro」のスマートフォン特集、事業会社のトレンドビジネス特集、インタビュー記事など「社会トレンド」「ビジネス」「マーケティング」分野の連載・執筆を担当。 趣味は写真撮影、ビジネス動向ウォッチ、観葉植物を育てること。

関連記事