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価値観 2019.01.08

世界を変える人が拓く道 ~【ニコライ・バーグマン】現代フラワーの可能性を広げる~

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「ニコライ バーグマン」。

フラワーデザインに少しでも興味があったり、大切な人へのプレゼントに贈る花を調べたりした人の多くに知られる花の人気ブランドだ。既成の概念を覆すデザインも多く手がけており、現代フラワーデザインの代名詞でもある。

 

ここ数年で急激に人気になったイメージのある「ニコライ バーグマン」だが、実は単身でデンマークから日本に花を学びに来たのは約20年も前のことだ。そこから下積みの時代、小さな店舗運営と地道に一歩一歩進んできた。

 

私がその作品と出会ったのは、5年ほど前に入籍した時のこと。親友がニコライ バーグマンの代表作である“フラワーボックス”をプレゼントしてくれたのだ。シックでかっちりとした真っ黒の正方形の箱。その蓋をあけると、とたんに色鮮やかな生花がぎっしりと並ぶ。

 

開けたとたんに、華やかなお花畑の世界が広がったようで、生きた宝石箱のようだと思った。

 

(c)ニコライ バーグマン公式ページ

 

今でこそ、箱に花をぎっしり詰める作品を目にするようになったが、この発案者こそニコライ バーグマンだ。とある企業のパーティーで「帰り際にゲストに渡す生花のギフトが600個ほしい。ただ、会場にはスペースがないから積み重ねて置けるものにしたい。」というリクエストから誕生した。当時は箱に生花を入れるなんていう発想はなかったため、彼の名が一気に広まるきっかけともなった作品だ。

 

似ている作品が出てきた中でも、花の質、バランス、色彩などすべてを総合的に見ると、ニコライ バーグマンの作品にはどうしても敵わない。

 

さらに彼が凄いのは、花を軸として新しい業界に色々と挑戦していることだ。世界有数のアパレルブランドや日本の伝統工芸とのコラボレーション、イベント演出はもちろん、太宰府天満宮という神社での展覧会には驚かされた。さらに、現在は独自のアクセサリー、カフェまで展開している。

 

(c)TokyoMDE

 

(c)ことりっぷ

 

日本の伝統である華道や生け花の世界でも、自分の名前がブランドとなり、違う業界にまで展開している人はほとんどいない。

 

彼の名はブランドとして認知され、花の世界を超えて、花の美しさと可能性を広げているのだ。

 

 

太宰府天満宮の展示に見る、自然への敬意と愛

ニコライ バーグマンは、2014年、2016年、2018年に太宰府天満宮を花でデコレーションする、というフラワー業界では今までにない企画に取り組んだ。そこには日本の文化を大切にしながらも、大胆かつユニークな発想で生み出された新しい花の世界があった。

 

2018年の展示のテーマは「未来の花見」。

まず驚くのは、「ピンクに染まる桜の季節を祝うため、鳥居をピンクにする」という提案から生まれた鮮やかなピンク色の鳥居だ。

 

(c)ニコライ バーグマン公式ページ

 

入り口でのインパクトで展示会の印象は大きく変わる。そこで、鳥居も「未来の花見」に似合うものにしてしまおうと言うのだ。

 

鳥居に手を加える、さらには派手な色にするということは、誰もがすぐに考え付くことではない。それに、嫌がる人もいるのでは・・・と怖がってできない人が多くだろう。それを企画して神主さんにも納得させてしまう度胸が彼らしい。

 

その他の作品を見ているうちに、ある特徴に気づいた。それは、「花」だけでなく「木の枝」「竹」「草」などをふんだんに活用して、独特の空間を創り出していることだ。

 

(c)HIGHFLYERS

 

ニコライ バーグマンは日本の花の文化に敬意を払っている。ヨーロッパのフラワーアレンジメントは基本的に派手で、「咲いている花」を中心にデコレーションをする。しかし、日本では一見地味と見える枝で空間を作ったり、苔を生かしたり、葉だけでアレンジメントをしたりと「植物の生」すべての流れを尊重する文化がある。

 

彼はその考え方が好きで、作品に植物が生まれて、成長して、枯れて・・・その過程のすべてを盛り込んでいる。単に花を飾っているのではなく、「生」を表現しているのだ。

 

私が気に入ったのは、こちらの作品。木目や草で表現された自然と、周りの鮮やかな色の花々には、植物の色々な表情が見て取れる。そしてこの丸い形は、日本の建築でよくある「丸窓」を連想させる粋なデザインだ。彼が丸窓をイメージしたかは分からないが、建築やインテリアデザインへの関心の高さがうかがえる。

 

(c)ニコライ バーグマン公式ページ

 

彼が生み出す世界には植物の生への愛と、日本にしかない花の文化への敬意が詰まっている。フラワーアレンジメントを大きく超えたこの世界観が人々を魅了する理由ではないだろうか。

 

 

花の生命を閉じ込めたくて作ったアクセサリー

非常に彼らしさを感じる最近の取り組みが、2017年スタートしたジュエリーブランド「NATUR(ナチュア)」だ。

 

「NATUR」はデンマーク語で「自然」の意味。植物の美しさと、自分の自然に対する愛と情熱を封じ込めるジュエリーは、花の世界の延長にあるという。

 

彼らしさを感じるのは、モチーフとして「枝」「蕾」「葉」など植物の様々な部分を扱っていること。そして、それぞれの美しさを表現していることだ。

 

つぼみがふくらんで、咲いて、美しい透明感のある花びらがいつか枯れて、散って、種をつくる、そんな花のサイクルすべてが美しいと思っているんです。その美しさをジュエリーにしたいと思いました。

 

ジュエリーなら、花のそれぞれの瞬間を閉じ込められる、ストーリーを伝えられる、そう思った。(Precious.jp編集部インタビューより)

 

花の色々なステージの美しさを閉じ込めたい。

そんな思いから、作られたジュエリーたちなのだ。

 

 

▼ブーケを作るように、その日の気分でチャームを選べるブレスレット。モチーフには葉や蕾が使われている。

(c)「NATUR」公式ページ

 

▼花とエンゲージリングを組み合わせれば、記憶に残るプロポーズのギフトに!これをもらったら、断りたくても断れないほど繊細な美しさ。

(c)STORYweb

 

植物の華やかな部分以外にも美しさを知る、表現する感性が詰まっていて素敵だ。

 

 

「我慢」=「夢につながる努力」

大宰府と「NATUR」を例に、彼独特の感性を書いてみたが、これらの原点として生まれ故郷のデンマークと、活動拠点として約20年暮らす日本の2つについても触れておきたい。

 

デンマークは日本の約10分の1の面積の小さな国だが、手付かずの自然が残る国。気候の変動が大きいため多種の生物が生息している。さらに「世界一幸福な国」リストでつねに上位にランクインする住みやすい国としても有名だ。ニコライ バーグマンはこの豊かな自然に囲まれながら、園芸植物の卸業をする父の背中を見て育った。日本とは違った感性が育ったのだろう。

 

ただ、彼は仕事の拠点として日本を選んだ。理由は、より刺激的であり、日本こそが「花を文化にしている地」だったからだと言う。

 

日本人は意識をしていないが、「華道」「生け花」と花がインテリアやギフトの分野を超えて「文化」にまで昇華している国はなかなかないのだ。四季があるからこそ、多様な植物があるのも日本ならでは。海外から見た日本は、実は花を学ぶには最高の場所だ。

 

彼はデンマークで育てた感性の上に、日本の文化としての花を学び、取り入れた。この組み合わせがニコライ バーグマンならではのユニークさだ。

 

(c)HIGHFLYERS

 

それだけ聞くと、彼がラッキーなだけのようにも見える。

しかし、彼の好きな日本語は「我慢する」なのだ。

 

デンマークには「我慢する」という言葉がない。つまり、この考え方自体がないのだ。彼が日本に来て一番学んだ事は下積み時代の「我慢」だった。その時代があったからこそ今がある彼にとって「我慢」は「夢につながる努力をすること」だと言う。

 

朝一番で生花市場に行き、店を掃除し、アレンジメントを作り、配達もすれば、レストランウエディングの装飾の出張もする。本当に朝から晩まで休みもなく働いた時代。そんな日々も、やりたい事が溢れていて楽しかったという彼。

 

「我慢」もポジティブにできるほど、やりたい事への思いが強いことが、彼の強さだ。新しいことにどんどん挑戦するのも、それが理由だろう。

 

デンマークと日本ではぐくんだ自然への愛と感性。それを生かして、これからも新しい挑戦を続けてくれることを期待する。

 

 

Nancy

この記事を書いた人

Nancy

ライター、PRプランナー。 日経BP社「IT pro」のスマートフォン特集、事業会社のトレンドビジネス特集、インタビュー記事など「社会トレンド」「ビジネス」「マーケティング」分野の連載・執筆を担当。 趣味は写真撮影、ビジネス動向ウォッチ、観葉植物を育てること。

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